ハワイ不動産購入時の名義について|日本と米国の法律と税務の違いを考慮すべき

ハワイ不動産購入時の名義の種類

ハワイイメージ

これからハワイ不動産の購入を考えて居る方は、物件選定も大事ですが、名義についても是非事前に決めておくことをおすすめ致します。

まずは米国の名義の種類の基本を学びましょう。

1.Tenancy in Severalty (単独名義)
一人の個人または一つの事業体が物件を単独所有する形態です。
2.Tenancy in Common (共同名義)
割合を自由に決めることができます。死後はそれぞれの権利分をそれぞれの相続人が相続します。この名義形態にする為には、兄弟同士や友人同士など権利の線引きが明確でないといけません。
3.Tenancy by Entirety (夫婦共同名義)
夫婦間にのみ適用される名義形態です。所有者に万一のことがあった場合、相続手続きをすることなく、自動的に生存している所有者に権利が移り、単独名義となります。
4.Joint Tenancy with Right of Survivorship (含有不動産名義)
複数の個人または事業体が均等に持分をもち、万一のことがあった場合には、相続の手続きをすることなく、残った所有者に均等に権利が移ります。

1番と、2番については、日本の単独名義と共有名義と考え方は一緒です。
米国独特の考えなのが、3番と4番です。

持分の規定がない共有名義 

と言ってもイメージが付かないかも知れませんが、持分の規定がないという事は、物件の名義に入っている名義人の内、名義人の一人が亡くなった場合、亡くなった方の権利は自動で、残りの名義人に委譲します。

この自動で権利委譲する仕組みが、「ジョイント」と呼ばれる形式です。
そしてこのジョイントは米国では一般的な名義の持ち方でもあります。
この他の名義では、ハワイの不動産名義で多いのが「トラスト」と呼ばれる名義です。
トラスト=信託 の意味です。

個人名義では無く、トラストという団体というか組織が所有する形になります。
そして、その「トラスト」を例えば家族で所有するという様なイメージで特に富裕層の場合は、このトラスト名義で持っているケースが多く感じます。

米国の相続は大変!!?

日本人の感覚だと、単独名義(Severalty)か、単なる共有名義(Tenancy in Common)の選択で落ち着きそうですが、アメリカの相続制度は、相続が発生すると、プロベート(Probate)と呼ばれる手続きが発生します。死亡した際に、その方の資産を算定するのに、基本的には裁判所の管理の元に手続きが進められます。

裁判所が※人格代表者(Personal Representative)を任命し、その代表者が債務を含めた残された財産や遺言書を調べ、相続人を確認します。(検認作業)
そして、債務の返済や必要な税の申告・納税を行い、最後に残った財産を相続人に受け渡します。プロベートには数年掛かることさえあります。そして弁護士費用や時間も掛かるのが特徴です。
単独名義または共同名義の場合は、相続人に自動的に相続財産が行くわけでは無いのです。

この様に、残された遺族の方がこの煩わしい手続きに巻き込まれない為に、米国では単独名義では無く、ジョイントやトラスト名義の物件が多いのも理解出来ます。

アメリカで何故共有名義やトラストが多いのか?

米国でこの様な共有形式が一般的な背景として、米国では日本で言う相続の基礎控除額が非常に大きく、一般的な資産の家庭であれば、遺産税などが掛からないのです。

日本が厳しすぎるんですよね・・・

2020年の申告義務がない基礎控除額は、$11,580,000ですから、約12億以上の資産を持ってない限りは、共有名義にしておけば充分な訳です。
日本だったら半分くらい課税されてしまいますよね・・・

https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/frequently-asked-questions-on-estate-taxes
IRSサイトより
If the decedent is a U.S. citizen or resident and decedent’s death occurred in 2016, an estate tax return (Form 706) must be filed if the gross estate of the decedent, increased by the decedent’s adjusted taxable gifts and specific gift tax exemption, is valued at more than the filing threshold for the year of the decedent’s death. The filing threshold for 2020 is $11,580,000, for 2019 is $11,400,000, for 2018 is $11,180,000, 2017 is $5,490,000, for 2016 is $5,450,000, for 2015 is $5,430,000, for 2014 is $5,340,000, for 2013 is $5,250,000, for 2012 is $5,120,000, and for 2011 is $5,000,000.

トランプ大統領になって経済が好調になった為に、一般的なサラリーマンでも結構な資産をお持ちの方が増えました。
そこでお金持ち保護の為に控除額が引き上がったのでしょうか・・

持分規定の無いジョイントの落とし穴

ジョイント名義にする事でプロベートを回避出来る為に米国では一般的でありますが、日本人が米国の慣習に則り簡単に名義を決めるべきではないのです。

例えば、日本在住のご主人の資金で、夫婦共同名義ハワイの別荘を購入したとします。

こうしたジョイント形式は、「持ち分規定の無い」のが特徴です。

しかし、持分規定が無いという事を、日本の国税の見解では、その不動産の持ち分割合は「均等である」(2名なら半分、4名なら4分の1)となります。

知らずに、ご主人のお金で別荘を買った後に

税務署の人が、
「夫婦共同名義で所有しているのに、この物件の購入資金の出所は・・・ご主人から出てますね? 
となると・・そうですね・・・50%を奥様に贈与した事になるので、贈与税を払って下さいね。」

この様なびっくりしてしまう結末を迎える可能性が高いです。
実際に判例も出ているので、何も考えずに、名義を決めると後で思いもしない税金が発生すると考えると怖いですね。

ジョイントはハワイで一般的でも・・

ハワイに住んでいる人からすれば、

日本のお客様が名義を決めるときに、お客様が「単独名義」を選択しようとしたとき、ハワイの日本の事情を知らないエージェントは万が一の際にプロベートの手間を回避する為に、よかれと思って、ジョイントテナンシーや夫婦共同名義(共有)にする事を勧める場合があります。
お客様としては米国のルールなんて知らないのですから、そのアドバイスに感謝し登記を終えた後に・・・発覚・・・

となることが有るようです。

Transfar on Deth TODが注目!?

ハワイ不動産の購入資金の出所は、お父さんですが、家族子供に、相続時の手続きの手間は掛けさせたくないという時に、日本の税制に合わせた合理的な方法は無いのか・・・

そんな方にご紹介する事例が、Trancefer on death=TOD というやり方です。

TODとは(Trancefer on death)、「死亡時承継人指定口座」と日本語訳される様ですが、万が一の際には、「継承人に引き継がれる」という事を事前に登記しておく方法です。

生前遺言登記という感じだとイメージがつきやすいかも知れません。

DEEDと呼ばれる権利書にあたる書類に、購入時または購入後に、TODを追加しておくのです。
死亡時の受け取り人口座を、複数人指定する事も出来ます。更に、指定された方が、亡くなった場合に、さらにその財産を誰に引き継ぐのかについてもこのTODで指定する事が出来ます。

トラストの設立も一つの手段

ハワイに不動産を購入時にトラスト名義にする方法もあります。物件の名義は、トラストとなり、万が一の際にはトラストの所有の為に、懸念点のプロベートを回避が出来ます。
トラストは米国の法律内で設立するものですので、詳しくは専門家にお尋ね頂くのが宜しいかと存じますが、注意点としては、日本の税制に照らし合わせながら設立をするべきだと思います。
またトラスト(信託)の設立には弁護士に依頼をするなど必要があるために、手間とお金が掛かります。

手間やコストを掛けずに、相続時の手続きまで準備をしておきたいという方には、「TOD」は検討するに値すると思われます。

【良くある間違い】

ハワイのコンドミニアムを購入し名義はTODで継承人を奥様に指定しておくことで、万が一の際は、奥様に自動で権限委譲されますが、日本国内において相続税が回避される訳ではありません。

日本在住なら日本の税務を抑えるべし

ハワイの不動産を購入する際の名義は大変重要なことです。
将来も日本をベースに過ごす予定であるならば、あくまでも日本の税制を軸にして考える必要がございます。

関連記事一覧